【判例解説】重傷の主婦に休業損害413万円を認定。3年に及ぶ家事への支障が認められた事例
導入:治療が長引くと、休業損害はもらえなくなる?
交通事故で重傷を負い、治療が1年、2年と長引いてしまった場合。 「もうだいぶ動けるようになったでしょう?」 「いつまで休業損害を請求するつもりですか?」 保険会社からこのように言われ、打ち切りを迫られるケースは少なくありません。
しかし、体に痛みが残り、以前のようにテキパキと家事ができない状態であれば、その「家事への支障」は正当な損害として認められるべきです。
今回は、重篤な事故被害に遭われた兼業主婦の方について、約3年間の治療期間の全期間にわたり、合計約413万円の休業損害が認められた裁判例(横浜地裁 令和3年3月10日判決)をご紹介します。
どんな事案だったのか?
被害者主婦(原告)の状況は以下の通りです。
治療期間:事故から症状固定(治療終了)まで約3年間。
この裁判では、治療期間が長期に及んだことから、家事の休業損害の計算方法(基礎収入や労働制限率)が大きな争点となりました。
判決のポイント1:主婦としての労働価値は女性の「平均賃金」が基準
裁判所は、家事の価値を算定する基準として「事故のあった年の女性の全年齢平均賃金(賃金センサス)」の年収約372万円(日額10,211円)を採用しました。
判決のポイント2:3年間の治療期間「ずっと」家事への支障を認定
保険会社は通常、入院期間や退院直後しか休業損害を認めない傾向があります。 しかし、この裁判では、事故直後から治療終了(症状固定)までの「約3年間(1071日間)」すべての期間において、家事への支障があったと認めました。
裁判所は、回復の程度に合わせて、以下のように段階的に割合(労働制限率)を認定しました。
① 入院期間(約3ヶ月):100% 全く家事ができない状態として全額認定。
② 退院後~約7ヶ月間:50% リハビリに通い、ある程度生活できるようになっても、医学的には無理をしている状況であったことから、まだ「家事の半分に支障がある」と認定。
③ その後~約1年4ヶ月間:30% 医学的に改善も見られるものの、痛みが続いている状態を考慮。
④ その後~症状固定まで(約9ヶ月間):20% 治療終了まで痛みが残り家事が辛い状態であることを認め、最後まで20%の損害を認定。
実際の計算式(裁判所の認定額)
裁判所が認定した計算式は以下の通りです。 (※端数処理などで実際の判決文とは数円異なる場合があります)
【基礎収入日額:10,211円】
・期間①(100%制限):10,211円 × 97日間 = 990,467円 ・期間②( 50%制限):10,211円 × 213日間 × 0.5 ≒ 1,087,471円 ・期間③( 30%制限):10,211円 × 496日間 × 0.3 ≒ 1,519,396円 ・期間④( 20%制限):10,211円 × 265日間 × 0.2 ≒ 541,183円
■合計認定額:4,138,517円
このように、段階的に割合を下げていく「逓減(ていげん)方式」を用いつつも、被害者の具体的な痛みに寄り添い、長期間の補償を認めたのです。
まとめ:長期間治療した主婦の休業損害も認定される
特に骨折などの重傷事案では、痛みや可動域の制限が長く続き、掃除や洗濯、料理などの家事労働に長期的な支障が出ることが多々あります。
「自分の家事の支障が適正に賠償してもらえるか不安」「保険会社から提示された休業損害の金額が少なすぎる気がする」 「まだ痛くて家事が辛いのに、治療費や休業損害を打ち切ると言われた」
そのような場合は、決して諦めず、適正な賠償額の獲得に向けて弁護士にご相談ください。
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