交通事故の怪我による家事の支障の損害(主婦休損)について

交通事故の保険のシステムでは、既婚の女性が交通事故で怪我をした場合に、家事に支障が出ているものと想定して、その分の損害賠償を受け取ることができるようになっています。これを「主婦休損」といいます。
(主婦業を休まないといけなくなったことによる損害を賠償する保険金)

家事以外のお仕事をされている既婚女性の方でも、一般的に夫よりは家事を負担しているものとして、同様に「主婦休損」を受け取れます。
男女平等同権の時代に変な話のようには思えますが、交通事故の実務ではそうなっています。やはり一般的に女性の方が家事をしている傾向があるという現実があるからだと思われます。

では、その主婦休損はいくら払われるのでしょうか。
会社員であれば、仕事を休めば減給されて、給与明細にその証拠が示されますが、主婦の仕事にはそういうものがありません。
そこで裁判所は、全ての女性の平均年収を、1年間の主婦の働きの金銭的価値として考える仕組みになっています。
それは、令和7年の統計であれば437万700円とされています。1日に換算すれば1万2000円ほどです。
主婦の方が、例えば事故の怪我のせいで丸一日、全く家事が出来なかったとなると、1万2000円ほどの損害が出たとみなされるのです。それが10日続けば単純計算で12万円ですね。

この基本的基準を踏まえたうえで、事故の状況や怪我の程度に応じて、妥当な方法で「主婦休損」は算出されることになります。
例えば、事故にあって最初の3日間は寝込んだけれど、あとの7日間は少しは回復したのではないか、さらにその後はもっと回復したのではないか、と判定された場合→3日間は100%、7日間は50%、あとの期間は20%と計算されるケース。
また、通院日だけ家事が出来ないと仮定→通院日数×1万2000円で計算されるケース
などもあります。

ここでひとつ、公開されている裁判例を紹介します。

横浜地方裁判所令和4年4月13日判決では、夫と子供と同居している兼業主婦について、130万円以上の休業損害が認められました。
この方はパート勤務をしていて、年収は100万円程度でした。怪我は、むちうちと右手首の損傷です。事故から約2週間で仕事には復帰していました。
ここだけを見ると、保険会社からは「仕事に戻っているなら、早期に回復していて、休業損害はもうあまりありませんね」と言われそうな事案です。

しかし裁判所の見方は大きく違うものでした。

約2週間で復帰できたパート勤務を基準にするのではなく、当時の女性の平均年収(1年間の主婦の働きの金銭的価値)である376万2300円を基準にして、そのうえで、右手首の痛みなどにより、家事全体について423日間にわたって平均3割の制限があったと認めたのです。
その結果、休業損害(主婦休損)は130万8043円と認められました。

もしこれを単純に「パートを休んだ数日の減給分」だけで考えていたら、数万円程度の話で終わっていたかもしれません。
数万円と130万円、非常に大きな違いです。

もちろん、怪我の内容、家族構成、実際にどんな家事をしていたか、どの動作がつらかったか、どのくらいの期間つらかったかによって結論は変わるため、この裁判例があるからといって、パート主婦なら誰でも同じように主婦休損が認められるという話ではありません。

ただ、私が今まで取り扱った事案の中では、既婚女性で主婦休損が1円ももらえなかった経験はありません。
万が一相手の保険会社から主婦休損を払えないと言われれば、怪我の影響でいかに家事が大変かをしっかりお聞きして、証拠を揃えて請求させていただきます。

特に、むちうちや手首の痛みは、外から見ても分かりにくいです。

料理で鍋を持つと痛い。洗濯物を干すと首がつらい。買い物袋を持つのがきつい。掃除機をかけると手首に響く。近所に住む親の介護ができない・・・
擦過傷や手術の傷があれば水仕事が出来ない期間もあります。
こういう生活上の支障は、多種多様です。
だからこそ、どの家事が、いつからいつまで、どのくらいつらかったのかを具体的に説明することで、適切に主婦休損を受け取ることができます。

写真やレシート、家族とのLINEのやりとり(痛くて料理できないからお惣菜を買ってきてと夫に頼むなど)等、なんでも証拠になります。弁護士がそういった証拠を整理して、しっかり主張を組み立てます。

交通事故のあと、家事がつらい。仕事には戻っているけれど、家事がつらい。

そう感じている方は、保険会社の提示をそのまま受け入れる前に、一度弁護士に相談してみてください。

無料(電話・メール・対面なんでもOK)にて査定を承ります。
相談後、依頼しなければならないということはございません。 ご依頼いただいた場合のみ、解決後に報酬をいただきます。