「主婦業の価値は年間419万円?」交通事故の休業損害、正しい計算式と相場を解説
1.主婦の仕事には「年間400万円以上」の価値がある
「専業主婦だから、事故で休んでも給料が減るわけじゃないし、休業損害はもらえないわよね…」
もしそう思っているなら、それは大きな誤解です。
交通事故の損害賠償実務において、家事労働は経済的価値のある立派な仕事として扱われます。
では、具体的にいくらくらいの価値があるのでしょうか。
裁判基準などで用いられる統計データ(賃金センサス)では、女性の全年齢平均賃金を基準とするのが一般的です。
令和6年時点の基準では、主婦業の年収換算額はおよそ419万4,000円とされています。
これは、賃金センサス令和6年版の女性全年齢平均賃金を参照した概算値です。
2.日額に直すと「1日あたり約11,500円」
年収419万4,000円を365日で割ると、1日あたりの金額は約11,500円になります。
つまり、交通事故による怪我で家事ができなくなった場合、本来はこの金額を基準として休業損害が算定されるべきということになります。
入院などにより家事が100%できない場合の計算例
11,500円(日額)×10日間=115,000円
「家事ができない」という事実だけで、これだけの損害賠償を請求できる権利が法律上認められているのです。
3.入院していなくても「家事が辛い」なら請求できる?
ここからが非常に重要なポイントです。
実際の事故では、「入院するほどではないが、むちうちで首が痛く、掃除機がかけられない」「買い物で重い物が持てない」といったケースが大半を占めます。
「痛いけれど無理をして家事をしていた場合、損害はゼロになるのか」
答えは、いいえです。
実務では「労働制限率(家事にどの程度支障が出ていたか)」という考え方を用います。
怪我の症状は、事故直後が最も重く、治療とともに徐々に改善していくのが一般的です。
そのため、時期ごとに家事への支障の割合を変えて計算する「逓減方式」がよく使われます。
治療期間3か月(90日)の計算シミュレーションは次のとおりです。
最初の1か月(事故直後の強い痛みがある時期)
家事の半分しかできなかった場合(制限率50%)
11,500円×50%×30日=172,500円
次の1か月(やや改善したがまだ辛い時期)
家事の3割に支障があった場合(制限率30%)
11,500円×30%×30日=103,500円
最後の1か月(かなり良くなった時期)
家事の1割に支障があった場合(制限率10%)
11,500円×10%×30日=34,500円
合計すると、約31万円の休業損害となります。
このように、入院していなくても、具体的な症状や家事への影響をきちんと主張することで、正当な補償を受け取れる可能性があります。
4.保険会社の提示額には要注意
もっとも、相手方の保険会社が最初から日額11,500円を前提に計算してくれることは、ほとんどありません。
多くの場合、自賠責基準である日額6,100円を提示されたり、場合によっては「主婦の休業損害は認められません」としてゼロ回答がなされることすらあります。
保険会社の提示額
日額6,100円
弁護士基準
日額約11,500円
この差は非常に大きなものです。
主婦業の価値を正しく評価してもらい、適正な賠償金を受け取るためには、保険会社の提示をそのまま受け入れるのではなく、交通事故に精通した弁護士による交渉が不可欠です。
- stacks
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